Netscapeの終焉
初回投稿日時: 2007年12月30日15時40分12秒
カテゴリ: News 雑談
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各地で既報の通り、Netscapeがまた終焉を迎えるという記事が出てます。なんだかんだと言われてもブランドとしての価値は未だにそれなりにあるとは思うので、また変な復活をするのかもしれませんが、元Netscapeファンとしてはもうそっとしておいてあげて欲しいです。
Netscapeが急激に衰退したのは98年ごろです。これには二つの原因があると言われています。ひとつはWindowsへのIEのプリインストールによる強引なシェアの低下。もう一つは、当時の最新バージョンであるNetscape Navigator/Communicator 4.x自体のクオリティが低く、技術的にも負けた、というものです。
ですが、後者の評価は、今考えれば(つまり結果論では)CSSへの対応が酷すぎたことが最大の原因なのは明白なものの、正確な意見ではないと思います。確かに、IEと同等のクオリティがあればシェアを維持できたのかもしれません。しかし、それが可能だったのかどうか。それは次の時系列を見ると難しかったのではないかと思わされます。まさに、待った無しの激動の時代です。
- 1996年08月、Internet Explorer 3.0/Netscape Navigator 3.0リリース
- 1996年12月、CSS1.0勧告
- 1997年01月、HTML3.2勧告
- 1997年06月、Netscape Navigator/Communicator 4.0リリース [10ヶ月]
- 1997年10月、Internet Explorer 4.0リリース [14ヶ月]
- 1997年11月、Windows95 OSR2.5リリース(IE4.01バンドル)
- 1997年12月、HTML4.0勧告
- 1998年01月、Netscape Navigator/Communicatorの無償化
- 1998年02月、Netscape Navigator/Communicatorのオープンソース化
- 1998年05月、CSS2.0勧告
- 1998年07月、Windows98リリース
- 1998年10月、Netscape Communicator 4.5リリース [16ヶ月]
- 1999年03月、Internet Explorer 5.0リリース [17ヶ月]
- 1999年12月、HTML4.01勧告
- 2000年07月、Internet Explorer 5.5リリース [16ヶ月]
- 2000年11月、Netscape6リリース [25ヶ月]
Webブラウザ年表によるとこういう歴史になっています。ブラウザ戦争のまっただ中、勝敗を分けたバージョン4.0がリリースされているのは現行仕様のHTML4.01/CSS2(既にCSS2.1の方が主流ですが、実装上、2.0と2.1はあまり違いがありません)が固まったのはこれらのリリース後なんです。この年表からすると(実際のユーザのウケは別にして)Netscapeの製品の戦略として4.0までは間違ってはいないのではないかと思います。
しかし、NC4.5へのマイナーバージョンアップに16ヶ月もかかり、更にはNC5が開発中止に追い込まれ、25ヶ月後のNetscape6も満足なデキではなかったという開発の異常な遅れがあります。
一般に4.xのデキが悪いと言われるのは、このような開発の遅れから、「使える」後継バージョンの不在によって、その現役の期間があまりにも長すぎたこと、また、IEは主にWin/Macでしか利用できないため、UNIX系OSのためにNetscape Navigatorが使われ続けたことが原因だと思います。
それに対してこの時期のInternet Explorerの進化は非常に速いことが分かります。Firefoxが有名になってから、そのバージョンアップの速さに愚痴をこぼすWebデザイナの方のコメントを見たことありますが、IE6以降のブラウザの進化が一時的に止まっていた期間の方が特殊な時期だったと考えるべきでしょう。
このような現在よりも遥に激しい開発競争中に大きな資金源を断たれたNetscapeは追い込まれ、更には使い物にならないNetscape6のリリースで、Netscapeブランドに自ら引導を渡してしまったと思います。
それでは、当時、Netscapeが生き残るにはどうすれば良かったのでしょうか?
前述のように、Navigator 4.xのクオリティは当時としては(最高ではないにしても)仕方のないクオリティではないかと思います。ですから、技術的には迅速に5.0を完成させられなかったこと、また、Netscape6のリリースタイミングの見誤りと、その開発の遅れと言って間違いないでしょう。
ですが、資金難等の経済的な理由がそこにあったとすれば、Microsoftのバンドル戦略よりも前から、無償配布でも成り立つビジネスモデルを構築してしまう必要があったことになります。しかし、それを当時の経営陣に注文することはできない、先進的なものだと思います。
こう考えると、Netscapeの衰退は、当時、仕方のないものだったのかもしれません(Microsoftのバンドル戦略が合法だったかどうかに依存しますが)。