日本の技術者によるOSSの貢献が少ない理由
初回投稿日時: 2007年12月13日04時59分27秒
カテゴリ: 雑談
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OSSは主に英語圏で発達し、イマイチ日本では開発が盛んになりきれていないように思います。以前、US側の関係者に何故日本人からの貢献がこうも少ないのか、と質問されたことがあります。が、Mozillaプロジェクトを見渡すと、和訳等、ドキュメント関係の貢献者はそれなりに数が居て、開発系(とくに実際にパッチを書ける人)が極端に少ないので、おそらく後者のことを指しているのだと思います。
この理由を考えてみると、やはり日本のソフトウェアエンジニアの労働の過酷さにあるのではないかと思います。もちろんここで言うソフトウェアエンジニアとは現場で汗をかく人たちのことで、一般的なニュースに出てくるような金融系でもうけている、いわゆるIT業界で有名な虚業に関わる人たちのことではありません。
私の前職(下請負での開発)からすると、就職前に考えていたよりは過酷ではないものの、十分に重労働な業界だと思います。徹夜はそれほどありませんでしたが、残業がとにかく多く、平日は起きて、仕事、帰ってきて寝るのみ、という感じでした。当時、Bugzilla-jpの活動時間は睡眠時間を削ることで捻出していましたので、テストはできてもパッチなど作る時間は全くない、という状況でした。(もっとも、当時はC++のパッチは書けませんでしたが。)
US側の似たような立場のソフトウェアエンジニアの労働環境は知りませんが、Mozilla関係者を見ていると仕事は仕事時間しかやらないと割り切って、日本人よりも遥に自分の時間を大切にしているように感じます(極端な話、早く帰る人すら見かけます)。もちろん、日本のように企業が労働者を解雇することが困難な社会ではないので、自分の仕事はやっつけているという条件はあると思います。が、日本のIT企業のように残業しないと終わらないようなノルマをMozillaは課していません。乱暴ですが、これが向こうの技術者の一般的なスタイルなのだと仮定するなら明らかに自由な時間の有無が違います。もしくは、いわゆる有名企業のエンジニアのみがこういう待遇なのかもしれませんが、その場合でも日本の有名企業にもそれなりの数の優秀なエンジニアが居るはずで、それらの人がもっと貢献してくれてもおかしくないと思うのです。
このような状況では、本業以外でOSSに関わりたいと考えても自然とやれることは変わってきてしまいます。また、仕事で丸一日コードを書かされていると、OSSのコードまで書きたいとは思わなくなるかも知れません。
私自身、USと日本のIT業界の労働状況についてのちゃんとした知識がある訳ではないので、以上のものは根拠の希薄な推測でしかありません。ですが、大きな理由のひとつではないかと考えています。もし事実なら、日本のソフトウェアのエンジニアは就職後にOSSというとても良い実装例を見て、色々なことを勉強するという機会がUSのエンジニアに比べて非常に少ないことになります。それはとても憂慮すべきことだと思います。なぜなら、Googleの20%ルールにあるように、エンジニアにとって会社から命じられたこと以外の開発作業というのは知識を広げたり、仕事では得られない経験を積むという点で非常に重要なことだからです。日本のソフトウェアエンジニアのうち、一体何%の人が自分の意志でコードを書いたことがあるのか、気になるところです。